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HOME > 楽水庵ブログ > 「ボート選手の肋骨の痛みについて」を書こうとした矢先・・・
楽水庵ブログ
「ボート選手の肋骨の痛みについて」を書こうとした矢先・・・
こんにちは、「キネシオ ローイング インストラクター」(キネシオテーピング協会認定ボート競技専門指導員)
京都府長岡京市のスポーツ整体院 楽水庵の水谷です。先週に戸田へ車で行った事やワールドカップサッカーやらで結構ブログの更新ができていませんでした(^_^;)
さて、先週戸田へ行った際に寄った大学で「肋が痛い選手がいる」との事で、そのアプローチをアドバイスしようと思っていたのですが、生憎その選手が都合が付きませんでした。
その代わりと言っては何ですが、大学の合宿所でのセミナーが終わってから腰痛で悩んでいる選手2名から相談があり、翌日戸田で私が拠点にしているシェアハウスに来てくれました。
腰痛の悩みだったのですが、2選手共に腰痛が改善し練習強度が上がると今度は肋骨を傷めるリスクがありました。
調整をすると同時にアドバイスもさせてもらいました。
私が現役で漕いでいた頃はあまり「ボート選手の肋骨骨折」は聞いた事がありません。
どうも「ビッグブレイド」が普及した頃から増えだしたようです。
確かにビッグブレイドは水をしっかり掴めます。
私みたいに30数年ぶりに漕いだ者でもキャッチしっかり掴めましたから。
しかし、その分身体に負担が掛かってしまうようです。
では、どこに一番負担が掛かるか?
ずいぶん考えましたが、やはり「前鋸筋」という脇、胸の筋肉の横にある筋肉の機能低下が最重要です。
前鋸筋は、下の画像のように肘を伸ばして腕を真っ直ぐ前に押し出す筋肉です。
別名「ボクサー筋」とも呼ばれています。
ボクサーの脇の筋肉が発達しているのはそういう理由からです。
そしてこのストレッチングポジションが画像のような形です。
これは正しくボートのフィニッシュのポジションですね。
前鋸筋の状態が良くないと、このストレッチングポジションの時に筋肉が固くなり、かつローイングではこのポジションを取る回数が圧倒的に多い。
練習量の多い大学ボート部員なら尚更です。
単に骨が弱いのなら、マスターズでやっておられる皆さんの方が肋を傷める事が多い筈です。
しかし、私の知っている範囲では、腰や肩を傷めている方は多いけれど肋を傷めている方はおられません。
これは強度は置いておくとして、やはり反復回数の量ゆえと言っていいのではないでしょうか?
そして、ボート選手の肋骨を傷めるポイントは、大体下の図の通りです。
肋骨下部と、背面の季肋部に集中しています。
季肋部の「季」というのは「一番下」という意味だそうです。
前鋸筋と季肋部は動きが繋がっています。
ですから、前鋸筋の機能が低下していると季肋部の動きも悪くなり、ローイングの反復運動で最悪「剥離骨折」になってしまいます。
と、ここまで書こうと思ってた矢先に、病院実習で忙しかった医大のボート部員が久しぶりに来院。
今日も以前のように腰や膝かなと思っていたら、何とそれこそ「肋が痛い」との事。
あまりにもタイムリーです!!
先ほどの図を見せたら納得してました。
彼女が痛めていた部分は左肋骨下部。
仰向けで起き上がると結構痛みが出るようです。
検査してみると、左前鋸筋の機能が低下していました。
前鋸筋及び季肋部にテーピングし、更に首や肩の調整を左右共に。
患側は左ですが、ご存知の通り肋骨は左右繋がっています。
ですから、右の肩甲骨周りの調整をしても左肋骨の痛みは減少していきます。
肋骨全体を一つの「ユニット」としてみた場合、やはり反対側の動きも良くするべきと思います。
調整を終え、最後にエルゴを引いてもらいました。
エルゴを引くと少しは痛みがあるそうですが、仰向けで起き上がったりゴロゴロしたりする際の痛みはほとんど出なくなりました。
そこで、エルゴの途中で左前鋸筋のエクササイズを少しやり、再度引いてもらうと更に痛みは減少。
このエクサイサイズというのは、相撲でいうところの「テッポウ」です。
肘を少し曲げた状態で、掌を真っ直ぐ肘を伸ばしながら押します。
空手の付きやボクシングのストレートパンチでも良いですね。
現に戸田で前述の大学生を調整する前にお越しになったキックボクサーの方は、普段からパンチングをされているせいか前鋸筋に全く問題はありませんでした。
ただ、突きやパンチは「上肢の回旋」、つまり腕を回しながら行うという動作が伴い、前鋸筋以外の筋機能も必要になってきます。
そういう訳で、ここは「テッポウ」の方がローイングの前後に行う補強運動に向いていると感じます。
壁や柱に向かって脇を意識しながら「グングン」と押します。
これによって前鋸筋の機能が回復するとローイングにおける肋骨骨折のリスクは減少するでしょう。
最後に蛇足かも知れませんが、ボート選手の肋骨骨折は上の図のように肋骨下部と季肋部周辺です。
しかし、ウエイトリフターは第1肋骨の疲労骨折が多いようです。
この違いは、肋骨の引っ張られる方向がウエイトリフティングは鉛直方向、つまり上に引っ張られるのに対しローイングでは水平方向だからと考えられます。
これを読んでくださったボート関係者の皆さんにこのブログが少しでも役に立つのなら嬉しく思います。
*あくまで個人の感想です
2018年7月 8日 22:58